姿三四郎のモデル西郷四郎の誕生日である、
山嵐
『其の実際の掛け方、互いに右に組んだと仮定(西郷四郎は左利き)、
右手で相手の右襟を深く取り、
左手で相手の奥袖を握り、
同時にかなり極度の右半身となって、相手を引き出す手段として、
先ず自分の体を浮かしたり、沈めたり、又ある時は腕先で、ある時は全身を以て、巧みに押すと見せないで、相手を後方に制するのである。
そこで自然に相手が押し出る途端を、
即ち嶺から嵐の吹き下ろす如く、
全速力を以て充分に被って肩にかけると同時に、
払腰と同様に相手の右足首を掬ふ様に払ひ飛ばすのである。
此の技を払腰と背負投のコンビネーション
(この時、襟を取る手は拇指を内に入れてもよし、又、その反對に外に出して取ってもよい。実際、西郷は両方用ひた様)
西郷がこの技を得意としたのは、彼の身體上の特徴が二つあった事。
その一つは彼の身體が矮小であったから(西郷四郎 身長、約五尺一寸(約153センチ)、体重、十四貫(約53キロ))、殊更に腰を下げなくても、押し返す相手をそのまゝ引込めば、彼の体は丁度理想的な支点となる。
故に時間を省き、又、潰される憂ひがないのである。
(現在、かた襟は6秒以上は反則となっており)
もうひとつの特徴は、
彼の足ゆびが普通の人と違って、熊手の様に皆んな下を向いてゐた。
だから払腰の様に足をのばして相手の足首にかけると、それが豫定の位置をはずれて、上の方に流れる様な事がない。
即ち、相手の踝を目的として、そこにぴたりと喰いついている
その上、彼は前にも言った様に大胆に思ひ切って、乾坤一擲に技をかけるのであるから、殆ど百発百中相手を投げ飛ばした。
技とは、多くの事柄のコンビネーションとその目的に即した素早い行動
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西郷の師匠は、嘉納治五郎その遺訓に
己を完成し、
世を補益するが
柔道修行の
究竟の目的である。
道を作り極めて
世の中を補益する
(不足していることを、補うこと)